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スーツの胸ポケットは小さな部分ながら、全体の印象を左右する重要なディテールです。この記事では、胸ポケットの種類や特徴、体型・シーン別の選び方を専門家が詳しく解説。読むだけで、あなたに最適なスーツの胸ポケットを選べるようになります。
胸ポケットの役割と基礎知識

スーツの胸ポケットは、ただの「飾り」ではありません。見た目の印象を大きく左右するディテールであり、良くも悪くも着る人のセンスや立ち姿まで変えてしまいます。ビジネスやフォーマルの場では、ポケットの形や角度がわずかに違うだけで、上品さやカジュアルさの印象が変わります。胸ポケットを理解することは、スーツを「着こなす」ことにつながるのです。
胸ポケットは何のためにあるのか?
胸ポケットの起源は、19世紀の英国にまでさかのぼります。当時、紳士たちはハンカチやチーフを入れるために胸元に小さなポケットを設けていました。現在では実用的に使うよりも、「装飾的な意味合い」が強くなっています。特にビジネススーツでは、胸ポケットに物を入れるとシルエットが崩れるため、実際には使わないのが一般的です。
一方で、ポケットチーフを差すことで胸元に立体感と華やかさをプラスできます。白チーフはフォーマルな印象、柄チーフはカジュアルな印象を与えます。このように、胸ポケットはスーツ全体の「表情」を作る小さな舞台装置といえるでしょう。
胸ポケットの英語名称
英語では、胸ポケットを「breast pocket」と呼びます。最も一般的な直線型のポケットは「welt pocket(ウェルトポケット)」といい、布地の縁を折り返して縫い込む仕様です。カーブを描くデザインは「barchetta pocket(バルカポケット)」、イタリア語で「小舟」を意味します。その名の通り、胸のラインに沿って緩やかに湾曲し、柔らかく自然な印象を生み出します。
一方で、ジャケットによっては「patch pocket(パッチポケット)」や「flap pocket(フラップポケット)」が採用されることもあります。これらの名称を理解しておくと、オーダー時や海外ブランドを購入する際にも役立ちます。
胸ポケット仕様がスーツの印象に与える影響
胸ポケットの形や角度は、意外にもスーツの「印象」に大きく関わります。たとえば、バルカポケットは胸元に自然なカーブを作り、立体的で柔らかい印象を与えます。そのため、イタリア系ブランドではよく採用され、エレガントで軽快な雰囲気を演出します。対して、箱ポケット(ウェルトポケット)は直線的で、英国調の落ち着いた印象を与えるのが特徴です。
また、ポケットの位置や角度は体型補正にもつながります。胸ポケットがわずかに傾いているスラント仕様は、視線を斜め上に誘導し、肩のラインをシャープに見せます。胸ポケットはスタイルをも引き立ててくれるのです。
スーツを選ぶときは、デザインだけでなくポケットの形にも注目してみてください。たった数センチの違いが、あなたの印象を大きく変えるきっかけになるはずです。
胸ポケットの代表的な種類とその特徴

胸ポケットには、見た目の印象やスーツの格を左右するさまざまな種類があります。仕立ての世界では、形の違いひとつで「英国的な硬さ」から「イタリア的な柔らかさ」まで、まったく異なる雰囲気を作り出せるのです。
箱ポケット(ウェルトポケット)
箱ポケットは、もっともベーシックでフォーマルな胸ポケットです。布地を内側に折り込み、細い縁(ウェルト)で口を縁取った構造になっています。直線的なラインが特徴で、全体の印象を引き締め、ビジネススーツでは標準仕様とされています。
ロンドンのテーラー街サヴィル・ロウでは、いまでもこの形が最も信頼されるデザインです。理由は、どんな体型にもなじみ、ネクタイやラペルの形を邪魔しないからです。いわば「最も間違いのない胸ポケット」といえるでしょう。
バルカポケット(舟型/カーブ型)
イタリア語で「舟」を意味するバルカ(barca)に由来したポケットです。口の部分が緩やかなカーブを描き、胸の立体感を自然に引き立てます。フィレンツェやナポリのサルトリア(仕立て屋)では定番で、手縫いによる微妙な角度の調整が仕上がりの美しさを左右します。
とくに、柔らかい芯地のジャケットや軽い仕立てに合わせると効果的で、肩の力を抜いた上品さを演出します。スーツを芸術品のように扱うイタリア人らしい発想が生んだポケットです。
パッチポケット(貼り付け型)
布地をそのまま表面に縫い付けた「貼りポケット」です。縁のステッチが見えるため、ややカジュアルな印象を与えます。ジャケパンスタイルやリネン素材のスーツによく使われ、軽快でリラックスした印象に仕上がります。
実際、夏場の営業職やカジュアルな結婚式などでは、このポケットが人気です。バッグを持たずに小物を入れたい人にも実用的で、機能とデザインを両立させた仕様といえます。
フラップポケット/スラントポケット(傾斜型)との関係
フラップポケットは、ポケット口にフタ状の布(フラップ)が付いたタイプで、雨や埃を防ぐ実用性から誕生しました。胸ポケットに採用されることは少ないものの、腰ポケットと組み合わせることで全体の統一感を生みます。
一方、スラントポケット(斜めポケット)は、ポケット口がわずかに傾いており、動きを感じさせます。スポーティーな印象を出したいときや、体をすっきり見せたいときに向いています。英国の乗馬服から派生したデザインで、現在でもトラディショナルなスーツに多く見られます。
各仕様の比較
| 種類 | 印象 | 主な用途 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 箱ポケット | きちんと・フォーマル | ビジネス・冠婚葬祭 | 最も汎用性が高い |
| バルカポケット | 柔らかい・エレガント | イタリア系スーツ | 立体感を強調する |
| パッチポケット | 軽快・カジュアル | ジャケパン・夏用 | 実用性が高い |
| スラントポケット | シャープ・スポーティ | 英国調・乗馬服由来 | 視線を上に誘導 |
スーツを選ぶときは、素材やシーンに合わせて胸ポケットを選ぶことで、印象が格段に変わります。たとえば「堅く見せたい日」には箱ポケット、「少し抜け感を出したい週末」にはバルカポケットのスーツを選ぶなど、目的に応じた選択を心がけましょう。それだけで、同じスーツでも印象は驚くほど変わります。
胸ポケットの代表的な種類とその特徴

スーツの胸ポケットは、見た目の印象やスタイルの方向性を大きく左右するパーツです。直線か曲線か、貼り付けか内縫いか、その違いだけで「英国紳士の端正さ」から「イタリア仕立ての軽やかさ」まで表情が変わります。
箱ポケット(ウェルトポケット)
箱ポケットは、最も一般的でフォーマルなデザインです。布地の口を内側に折り込み、縁に細い布をかぶせて仕上げる「ウェルト仕立て」が基本構造です。直線的なラインが特徴で、ビジネススーツや礼服に多く採用されています。
たとえば、ロンドンの老舗テーラー「ヘンリープール」では、このポケットを標準仕様としており、堅実で誠実な印象を与えることを重視しています。角度や長さがわずかに違うだけで全体のバランスが変わるため、職人の精度が試される部分でもあります。
バルカポケット(舟型/カーブ型)
バルカポケットは、イタリア語の「舟(バルカ)」に由来するデザインです。ポケット口がなだらかな弧を描き、胸の丸みに沿うように作られます。ナポリ仕立てのジャケットに多く見られ、柔らかさと色気を同時に演出できるのが特徴です。
たとえば、イタリアのサルトリア「リヴェラーノ&リヴェラーノ」では、手縫いで微妙なカーブを調整し、まるで胸が自然に盛り上がっているような立体感を生み出します。この工程はミリ単位で職人が調整するため、既製スーツでは再現が難しいディテールのひとつです。
パッチポケット(貼り付け型)
パッチポケットは、生地をそのまま表面に貼り付けた仕様で、縁のステッチが見えるカジュアルな印象のポケットです。スポーツジャケットやリネン素材のスーツに多く採用され、軽快で親しみやすい雰囲気を作り出します。
カジュアルな職場や休日スタイルにぴったりで、例えば夏場の営業シーンでは「かっちりしすぎず涼しげに見せたい」という要望からこのタイプを選ぶ人も増えています。見た目の柔らかさに加え、実用的で収納性があるのも魅力です。
フラップポケット/スラントポケット(傾斜型)との関係
フラップポケットは、ポケット口にフタ状の布をかぶせたデザインで、雨や埃を防ぐ機能を持ちます。もともとは乗馬服から生まれた仕様で、動きやすさと保護性を重視した実用的なデザインでした。
一方、スラントポケットはポケット口が斜めにカットされており、全体のラインに動きを与えます。胸元にこの要素を取り入れることで、視線が斜め上に流れ、肩のラインをシャープに見せる効果があります。英国調スーツに多く採用される理由は、この「構築的で精悍な印象」にあります。
各仕様の見た目・印象・用途の比較
| ポケットの種類 | 印象 | 主な用途 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 箱ポケット | 端正・フォーマル | ビジネス・式典 | 最も標準的で万能 |
| バルカポケット | 柔らかい・立体的 | イタリア系スーツ | 胸元を美しく見せる |
| パッチポケット | 軽快・親しみやすい | カジュアル・夏用 | 機能性が高く実用的 |
| スラントポケット | スポーティ・精悍 | 英国調スーツ | シャープな印象を強調 |
スーツを選ぶときは、場面や目的に合わせてポケットの形を意識することが大切です。たとえば、取引先への商談では箱ポケットで信頼感を、オフの日にはバルカやパッチで抜け感を出す。胸ポケットは、そんな「一枚上手な印象作り」を支える重要なディテールなのです。
バルカポケットを深掘りする

スーツ好きの間で“イタリアらしさ”を象徴するディテールといえば、間違いなくバルカポケットです。そのゆるやかなカーブには、ただの装飾を超えた哲学と職人の技が込められています。直線的な英国スーツとは異なり、バルカポケットは「柔らかさ」と「立体感」を両立させることで、着る人の体を美しく見せてくれます。
バルカポケットの名称由来・歴史背景

「バルカ(Barca)」はイタリア語で“舟”を意味します。その名のとおり、胸ポケットの口が船のように緩やかな弧を描くのが特徴です。このデザインが誕生したのは20世紀初頭のイタリア・フィレンツェ。構築的な英国仕立てとは対照的に、軽く柔らかな服作りを目指したサルトリアたちが考案しました。
当時、カチッとしたスーツが主流だった時代に、バルカポケットは“職人の遊び心”として注目を集めます。機能的には変わらないのに、カーブを描くだけで胸元に陰影が生まれ、ジャケット全体が生き生きと見える――そんな美意識が、いまもナポリ仕立ての代名詞として受け継がれています。
バルカポケットが得意とするスタイル(胸板を見せる、立体感)
バルカポケットの最大の魅力は、胸板の自然な丸みを引き立てる立体感にあります。直線の箱ポケットと比べると、光の当たり方が変わり、胸のラインに奥行きが生まれます。そのため、肩の力を抜いたイタリアンスタイルとの相性が抜群です。
たとえば、ナポリのサルト「チッチオ」では、バルカポケットを微妙に上向きにカーブさせ、着る人の胸を張ったように見せる工夫をしています。着心地の軽さと見た目の華やかさを両立させたいなら、この仕様は理想的といえるでしょう。
バルカポケットを選ぶ際の仕立て・加工ポイント
バルカポケットは、見た目以上に縫製が難しいパーツです。カーブを描く縫い目には高い精度が求められ、少しでも歪むと胸元全体が不自然になります。そのため、多くの職人はミシンではなく手縫いで仕上げることを好みます。
オーダースーツの現場では、カーブの角度を「ほんの3度だけ浅く」するなど、体型に合わせて微調整します。胸が薄い人は緩やかに、胸板が厚い人は角度を強めにすることで、自然な立体感が生まれるのです。この繊細な調整こそが、既製品にはないオーダーの醍醐味です。
適した体型・場面・注意点
バルカポケットは、体型をきれいに見せたい人や柔らかい印象を演出したい人に向いています。胸元に立体感が出るため、スリム体型の人にもおすすめです。一方で、胸が厚い方が選ぶ場合は、カーブを深くしすぎるとボリュームが強調されすぎることがあるため注意が必要です。
また、フォーマルな場面では控えめなカーブ、カジュアルな場では強めのカーブと、用途によって角度を変えると自然に馴染みます。
| 体型・シーン | おすすめ仕様 | 効果 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 胸板が厚い | 浅めのバルカ | 立体感を抑えて整う | カーブを深くしすぎない |
| スリム体型 | 強めのカーブ | 胸元に厚みを出す | 胸が浮かない程度に調整 |
| 高身長 | 箱ポケット | 重心が安定して見える | 全体が細長くなりすぎないように |
| カジュアルシーン | パッチポケット | 軽快で親しみやすい印象 | 生地感との相性を確認 |
スーツを選ぶ際には「襟の形」「腰ポケットの仕様」と合わせて見ると、全体のバランスがより美しく整います。小さな曲線ひとつで印象が変わる――それがバルカポケットの奥深さなのです。
胸ポケットの正しい扱い方とメンテナンス

胸ポケットは、見た目を整えるだけでなく、スーツを長く美しく着るための「扱い方」も大切です。糸の切り方ひとつ、チーフの挿し方ひとつで印象が変わり、寿命にも差が出ます。
しつけ糸(ポケット口など)の切り方・注意点
新しいスーツには、胸ポケットやベント(背中の切れ目)などに白いしつけ糸が縫われています。これは輸送中や陳列時に生地がゆがまないよう固定するためのもので、購入後は切って使用します。
胸ポケットのしつけ糸は「チーフを挿す予定がある場合は必ず切る」のが基本です。切る際は、はさみではなくリッパー(糸切り)を使い、糸だけを引き抜くように取り除きます。生地を引っ張ると、縫製がゆがんでしまうので注意が必要です。
また、腰ポケットのしつけ糸は、ポケットを使わない人はそのまま残しても構いません。しつけ糸を切るタイミングを迷う人は、試着した際に店員に相談すると安心です。
胸ポケットに「物を入れる」際の対策
胸ポケットは本来、収納のための場所ではありません。ペンや名刺を入れると、胸のラインが崩れてシルエットが乱れます。特に薄手のジャケットでは、物の形が外に浮き出て見えることがあります。
「胸ポケットは飾りに使う場所」と言う人もいます。もしどうしても名刺を一時的に入れる場合は、1~2枚だけを水平に入れるようにしましょう。スマートフォンやメガネなどの硬い物を入れるのは厳禁です。
出先でどうしても荷物を持ちたいときは、内ポケットを活用するか、小型のクラッチバッグを併用するのがおすすめです。
胸ポケット × ポケットチーフ活用法
ポケットチーフは、胸ポケットを「装飾」として使う最も代表的なアイテムです。シーンによって折り方を変えることで、印象を自在にコントロールできます。
たとえば、ビジネスでは「TVフォールド(四角挿し)」が定番です。白いリネンチーフを水平に挿すだけで、清潔感と誠実さを演出できます。一方、カジュアルな食事会やパーティーでは、「パフドスタイル」や「スリーピークス(三山折り)」など、柔らかい形状の挿し方が華やかです。
スタイリストによると、チーフは「服よりも主張しすぎないこと」が大切。ネクタイやシャツと同系色でまとめると、自然で上品な印象になります。
胸ポケットの仕様を変えるなら?既製スーツ vs オーダースーツ
既製スーツでは、胸ポケットの形はほぼ固定されています。標準的なウェルトポケットが主流で、万人に似合うよう設計されています。一方、オーダースーツでは、バルカポケットやパッチポケットなど、好みに応じて選ぶことができます。
オーダースーツ利用者の約7割が「胸ポケットの形を自分で選んだ」と回答しています。特にバルカポケットは人気が高く、「柔らかく仕立てたい」「イタリアらしい雰囲気にしたい」という要望が多い傾向です。
| 項目 | 既製スーツ | オーダースーツ |
|---|---|---|
| 胸ポケットの形 | 基本は箱ポケット | バルカ・パッチなど自由に選択可能 |
| 調整の自由度 | 限定的 | 体型に合わせてカーブ角度を指定可能 |
| コスト | 比較的安価 | やや高価だが満足度が高い |
| 仕立ての精度 | 工業的で均一 | 手縫いで立体感が自然 |
スーツを新調する際は、店頭で実際にサンプルを触りながら、自分の体型と印象に合う形を確認してみましょう。それだけで、スーツとの付き合い方がぐっと深まります。
シーン別・体型別の胸ポケット選びとコーディネート

胸ポケットは、スーツ全体の印象を左右する重要なディテールです。どんなシーンで、どんな体型の人が、どの形を選ぶかによって「信頼感」「軽快さ」「品のよさ」が変わります。
ビジネス/フォーマルで無難に選ぶなら
ビジネスシーンでは、胸ポケットの主張を控えめにするのが鉄則です。最も信頼されるのは「箱ポケット(ウェルトポケット)」で、直線的なラインが誠実さと安定感を与えます。大手商社や銀行員などの職場では、この仕様が圧倒的に多い傾向です。
フォーマルな場、たとえば結婚式や式典では、胸ポケットに白いポケットチーフを水平に挿す「TVフォールド」が基本。ネイビーやグレーのスーツに白チーフを合わせるだけで、品のよさが際立ちます。
「間違いのない印象を残したい」場面では、装飾を足すよりも、清潔感とバランスの取れた胸元を意識しましょう。
カジュアル~ジャケパンスタイルで遊ぶなら
オフィスカジュアルや休日のジャケパンスタイルでは、胸ポケットを使って“抜け感”を出すのがおすすめです。
リネンやコットン素材のジャケットには「パッチポケット(貼り付け型)」がよく合います。見た目に軽さが出て、ノータイでもきちんと感を保てます。
一方、柔らかいイタリア仕立てのジャケットには「バルカポケット」がぴったりです。自然なカーブが胸元を立体的に見せ、軽やかな雰囲気を演出します。
たとえば、春先の出張やカフェでの打ち合わせなど、堅苦しく見せたくない場面では、グレージャケット×バルカポケットの組み合わせが理想的です。
体型・スタイル別での選び方
胸ポケットの形は、体型とのバランスで選ぶのがポイントです。
- 身長が高い人:直線的な箱ポケットが似合いやすく、重心を安定させて見せます。
- 肩幅が広い人:カーブのあるバルカポケットを選ぶと、硬さを和らげ自然な印象に。
- 胸板が厚い人:浅めのバルカポケットで、立体感を抑えすっきりと見せられます。
- スリム体型の人:カーブを強めたバルカポケットやスラントポケットで、胸元に厚みを加えるのが効果的です。
| 体型・特徴 | 適した胸ポケット | 見え方の効果 |
|---|---|---|
| 胸板が厚い人 | 浅めのバルカ | ボリュームを抑え上品に見せる |
| スリム体型の人 | カーブの強いバルカ | 立体感を補って健康的に見える |
| 肩幅が広い人 | 緩やかなカーブ型 | 硬さを和らげバランスを取る |
| 背が高い人 | 箱ポケット | 安定感があり全体が引き締まる |
体型に合わないポケット形状を選ぶと、どれほど高級な生地でも不格好になるかもしれません。試着時に鏡を見て、胸元のラインが自然に見えるかを必ず確認しましょう。
胸ポケットと他ディテールの組み合わせで印象を変える

胸ポケット単体ではなく、ほかのディテールとの“組み合わせ”によって全体の印象が決まります。
たとえば、胸バルカポケット × 腰フラップポケットは、イタリアらしいエレガントさと英国の端正さを両立させる定番の組み合わせです。
また、胸箱ポケット × ノッチドラペル × 低めのボタン位置は、クラシックで落ち着いた印象を作りたい人に最適です。
逆に、胸スラントポケット × ナロ―ラペルは、シャープで若々しいスタイルに向きます。
小さなディテールを意識するだけで、同じスーツでも印象はまったく変わります。次にスーツを選ぶときは、ポケットを「ただの穴」ではなく、あなたの個性を表現するパーツとして見てみてください。
最新トレンドと今後の胸ポケット仕様の展開

スーツの胸ポケットは、これまで「装飾」としての役割が中心でしたが、最近ではファッション性と機能性を両立させた新しい形が注目されています。カーブの深さや角度、素材の選び方ひとつで印象が変わる時代。クラシックとモダンの境界が曖昧になり、個性を表現する要素として胸ポケットが再び脚光を浴びています。
現在注目されている仕様(湾曲・イタリア調・カスタムディテール)
近年、最も人気が高いのは「イタリア調の湾曲ポケット」です。バルカポケットのように胸に沿う柔らかなカーブが、スーツ全体を軽く見せ、立体的な印象を作ります。特にフィレンツェやナポリ系ブランド(例:キートン、ベルベスト、ラルディーニなど)では、控えめなカーブを持たせた「セミバルカ」仕様が増えています。
また、オーダースーツ業界では「カスタムディテール化」が進んでおり、顧客の体型や好みに合わせてカーブの角度を指定できるサービスも登場しています。以前は職人の感覚で仕上げていた部分が、いまでは3Dシミュレーションによって数値化され、誰でも理想のバランスを選べるようになっています。
その結果、胸ポケットは単なる装飾から「自分らしさを示すパーツ」へと進化しているのです。
サステナブル素材・ミニマルデザインと胸ポケットの関係
世界的に「サステナブル(持続可能)」という視点が広がる中で、胸ポケットにもその波が押し寄せています。リサイクルウールやテンセルなど環境負荷の少ない素材が普及し、それに合わせてポケットも“削ぎ落とす”方向に進化しました。
たとえば、ポケットを完全に閉じた「フェイクポケット」や、ステッチのみで存在を表現する“見せないデザイン”が増えています。これにより、軽量化・コスト削減だけでなく、無駄を省いたミニマルな美しさが実現しました。
近年の東京やミラノのビジネス街では、こうした「見せない胸ポケット」を採用したセットアップスーツが増加しています。着る人の清潔感と合理性を両立させる、新しい“機能美”の形といえるでしょう。
未来に向けた胸ポケット仕様の可能性(スマートスーツ・デジタル系素材)
テクノロジーの進化は、スーツの世界にも確実に影響を与えています。胸ポケットの内側にICカードや電子デバイスを収納できる「スマートポケット」を搭載したスーツがすでに登場しています。
たとえば、某国内メーカーでは、胸ポケット内に非接触センサーを内蔵し、ポケットにカードを入れたまま改札を通過できるスーツを展開。欧州では、導電性繊維を使ってスマートフォンの充電ができるジャケットも試作段階にあります。
また、デジタル素材の発達により、ポケット内部の生地が汗や湿気を自動で吸収・放出する「温度調整機能」も研究されています。
| 時期・テーマ | 主な仕様 | 特徴 | 採用例 |
|---|---|---|---|
| 現在(イタリア調) | 湾曲バルカポケット | 軽やかで立体的 | ラルディーニ、キートン |
| サステナブル志向 | フェイク・ミニマルポケット | 無駄を省き軽量化 | 各国セットアップブランド |
| デジタル応用期 | スマートポケット | IC・充電対応など機能性重視 | 国内メーカー・欧州ブランド試作段階 |
これからの胸ポケットは、装飾ではなく“ライフスタイルの一部”としての存在に変わっていくでしょう。あなたが次に選ぶスーツの胸ポケットも、もしかすると小さなテクノロジーを秘めているかもしれません。
よくある質問

- スーツのポケットには何種類ありますか?
-
スーツのポケットは大きく分けて「胸ポケット」「腰ポケット」「内ポケット」の3種類があります。胸ポケットにはバルカポケットや箱ポケット、パッチポケットなどがあり、腰ポケットはフラップ付き・スラント型などに派生します。内ポケットは名刺やペン用など機能的に作られ、全体で10種類以上のデザインが存在します。
- バルカポケットとは何ですか?
-
バルカポケットは、ポケット口が緩やかにカーブを描くデザインで、イタリア語の“Barca(舟)”が由来です。胸の丸みに沿って立体的に仕上がるため、自然な胸板の厚みを強調できます。イタリア・ナポリ仕立てに多く採用され、柔らかくエレガントな印象を演出するのが特徴です。
- スーツの胸ポケットの名前は?
-
一般的なスーツの胸ポケットは「ウェルトポケット(箱ポケット)」と呼ばれます。縁を布で細く縫い込んだ直線型の仕様で、最もフォーマルな形です。ほかにも、カーブを描く「バルカポケット」や、布地を外に貼り付けた「パッチポケット」があり、デザインによって印象が大きく変わります。
- ポケットの種類と名称は?
-
代表的なスーツのポケットは以下のとおりです。
- 胸ポケット:バルカポケット、箱ポケット、パッチポケット
- 腰ポケット:フラップポケット、スラントポケット、アウトポケット
- 内ポケット:ペンポケット、名刺ポケット、チケットポケット
用途と位置で分類され、ビジネスでは箱ポケット、カジュアルではパッチポケットが定番です。
- 胸ポケットにペンを入れるのはマナー違反ですか?
-
胸ポケットにペンを差すのはマナー違反とまではいえないものの、おすすめはできません。シルエットが崩れ、スーツのラインが不自然になるためです。ペンは内ポケットを使用しましょう。胸ポケットは装飾用の位置づけであり、ポケットチーフなどを挿して美しく見せるのがスマートな使い方です。
- ウェルトポケットとは何ですか?
-
ウェルトポケットは、布を内側に折り返し、細い縁取り(ウェルト)で口を囲んだ直線型のポケットです。構造がシンプルで上品なため、ビジネススーツや礼服に最も多く採用されています。縫製精度が高いほどラインが美しく出るため、職人技が試される部分でもあります。
胸ポケットの形は、スーツを着る人の印象を大きく変えます。自分の体型やスタイル、場面に合わせて最適な種類を選ぶことで、見た目の完成度が一段と高まります。次にスーツを選ぶ際は、ぜひ胸ポケットにも目を向けてみてください。
Grazie!


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